大学院博士課程の研究室を選ぶときの基準は?自己の反省とともに…

こんにちは。最近解析が多めで湿気が欲しい両生類研究者のdrywettyです。

今回はかなり前の話になりますが、私が博士課程の研究室を選んだ際に考えた基準を自己の反省とともに紹介します。

博士課程で研究室を変えた背景

簡単に背景を紹介しておきます。私は学部が6年制だったこともあり、普通の学部4年から修士2年にあたる4〜6年生の3年間を一つの研究室で過ごしました。元々創薬研究者になりたいという夢もあり絶対博士課程に行きたい、けど経験を積むためには博士は外の研究室に行った方が良いだろうと思い、博士過程から別の大学院に移りました。別の大学院に移ったからと言って自分がスキルアップできるとは限らないのですが、移る気満々で研究していました。学部時代の研究室では博士に行くとしか言ってなかったので、いきなりいなくなってしまい申し訳なかったと思います。すみません、脱線しました。

博士課程の研究室を選ぶときの基準

本論に戻ります。私が博士課程で行く研究室を選んだのは二つの段階で基準がありました。

  • 第一段階: 研究室訪問に行く研究室選び
    1. 自分が興味がある分野か
    2. 将来成長が見込める分野か
    3. 研究室の予算が潤沢か(奨学金など含め)
  • 第二段階: 受験する研究室選び
    1. 自分のスキルアップが期待できるか
    2. 一緒に研究をしたいと思える先生か

それぞれについて詳しくお話しします。

第一段階: 研究室訪問に行く研究室選び

研究室を決める際には絶対研究室訪問にいきましょう。自分の将来を左右する数年を過ごす場所を決めるので実際に見に行くのは大切ですし、受験するにしても受ける研究室の先生に挨拶しておく必要があります。たまに研究室訪問せずに受験する方がいるようですが、いくら試験の成績がよくても受け入れる研究室が受けた人のことを知らないと受け入れられないこともあるので本当に注意です。

1-1. 自分が興味がある分野か

当たり前ですが本当に大切なことなので1番最初に挙げました。博士課程に行く≒プロの研究者になるトレーニングをすることなので、自分の興味がある分野かどうかで研究へのモチベーションが雲泥の差になります。就職に有利そうだから大きな研究室に行きたいという考えの人がいますが、その研究室で取り組んでいる研究が本当に自分の興味があることなのかよく分析した上で選びましょう。私は免疫に興味があったので免疫系の研究室で創薬に携われそうなところを探していきました。

1-2. 将来成長が見込める分野か

将来成長する分野か見抜けたら苦労はしないよ!と言われそうですが私は大事にしてきた考えなので挙げました。私はもともと古典的な分子生物学のラボでしたが、将来の創薬を考えた時、ある一つの分子の機能を解析するより網羅的な解析法による標的探索がもっと必要になると思い研究室を変えました。結果としてオミックスの実験法と解析法を身につけて就職できたので、正解だったと思います。一方で、将来成長が見込めるかどうかは自信を持って判断するのは難しいと思います。個人的には、他の人とは違う分野に注目することが肝要だと思います。

1-3. 研究室の予算が潤沢か(奨学金など含め)

予算に関しては自分がどれだけ実験できるか、どんな材料を使えるかに関わるので重要です。学部時代の研究室の予算があまりなかったので博士課程では余裕がある研究室に行きたいと思い重視しました。研究室の予算については、科研費データベースで興味のある研究室の先生の名前で検索すると予算の規模や年数が分かります。

科研費データベース

億単位の研究費がある研究室もありますが、研究室の規模や実験内容にもよりますので高ければよいというわけではないことに気をつけましょう。たくさん予算がある研究室には学生やポスドクも多くいますので、結局自分が使える研究費は少ないこともあります。

また、私の場合は博士課程の学費や生活費などをなるべく自分で負担しないといけなかったのでRA等の給料や奨学金がもらえるかどうか、バイトをしても大丈夫かどうかを研究室に確認しました。結局バイトは研究が忙しくてD2までしかできませんでしたが、全くできないのよりは大きな違いでした。

以上の3点を主に気をつけて私は3つの研究室に目をつけて大学院説明会と研究室見学に行きました。ついでにですが、研究室見学の後には話をしてくれた先生方にお礼のメールを必ず書きましょう。私はこのメールに返事をしてくれない研究室は切りました。研究室にとって外から来る学生をどう見ているかが返信メールの有無で少し分かると思います。

第二段階:受験する研究室選び

研究室見学や先生への挨拶を済ませたら実際に受験する研究室を決めなければなりません。実際に話したり見聞きした情報を元に自分の人生の3年間をかける価値があると思う研究室を選びましょう。と偉そうなことを言っていますが、私は当初目星をつけて見学に行った研究室ではなく、見学の時に参加した大学院入試説明会で紹介があった別のオミックス系の研究室に決めました。決め手とした私の基準を紹介します。

2-1. 自分のスキルアップが期待できるか

一般的な分子生物学の研究を選ばなかったのはスキルアップが理由です。実験手技だけではなくプログラミングや統計解析の経験を積んでいた方が就活でも有利だろうと考えました。修士相当までの間に細胞実験、マウス実験は一通り経験してきてすでに自信があったので、博士課程ではより網羅的なデータの取得法や解析法を身につけたいと思いました(もちろん実験スキルに関しては今思えば過信でしたし、オミックス解析の検証にも実験は必須です)。実際は博士課程で研究室を移ることで一から研究を始めることになり、発表できる研究内容も少なくなり、アカデミアを目指す場合はあまり合わないかもしれません。自分の将来のビジョンを踏まえた上で今の研究室で業績を上げた方がよいか、別研究室でスキルアップした方がよいか考えるのが重要だと思います。

2-2. 一緒に研究したいと思える先生か

実際に会ったときの雰囲気や研究への想い、メールのやり取り等から自分がその先生と研究したいと思えるかどうかも重視しました。そうした結果、大きな研究室では人も集まってくるためかあまり熱い想いを話してくれる先生がいなかったので、最終的にまだPIになって時間が経っていない研究室が候補として残りました。ただ、実際に入った研究室で先生との関係性が良いものばかりではなかったので、先生との相性は本当に入ってみないとわからないかもしれません。

以上の2点を主に受験する研究室を決める判断材料にしました。最後に今だったら自分が何を重視するかを紹介して終わりたいと思います。

反省点:今なら何を重視するか

重視していなかったせいで少し後悔していることと、重視していなかったけどたまたま行った研究室が該当したことがそれぞれあります。

まず重視しなかったことで後悔していることは、留学生がほとんどいない研究室だったことです。日常的に少しでも英語を話せる機会があった方が良かったと思います。私は博士課程までほとんど英語を話す経験がなかったので、経験を積むためにはウェブ英会話や英会話イベントに積極的に参加するしかありませんでした。研究室の中でも英語を話す経験があったらもっと上達していたかもしれないなと思います。そのため、今だったら留学生が多い研究室を候補として考えると思います。

重視していなかったけどたまたま研究室が恵まれていた点は、新学術領域研究の研究グループだった点です。新学術領域研究とは科研費の種目の一つで、「新たな研究領域を設定して異分野連携や共同研究、人材育成等を図る大規模なグループ研究をサポート」している事業です(参考:日本学術振興会HP)。研究室が新学術領域研究に参加していたことによって毎年別研究室との交流イベントがあり、同年代研究者との人脈を広げることができました。自分の研究をするのに人との交流は面倒と思う方もいるかもしれませんが、大きな研究を行う際に研究者同士の協力はかかせませんので、新学術領域研究に限らず大きな研究グループに参加している研究室はおすすめです。

長くなってしまいましたが、以上が私が博士課程の研究室を選ぶ際に重視した点、重視すればよかった点でした。何を重視するかは人それぞれだと思いますが、私の経験が博士課程に進むことを悩んでいる方の役に立つと嬉しいです。それでは皆さん楽しい研究ライフを!

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